Tomonarism
<第1話>
「俺の守護霊」

皆さんは自分の守護霊に興味がありますか?
僕はあります。
自分を影ながら献身的に守ってくれる守護霊という存在を意識しだしてから、
僕はその正体に強く興味をそそられるようになりました。
しかし当たり前のことですが、見える物ではありません。
だからこそ知りたいのです。
僕の後ろの百太郎はどんな百太郎なのかと。

高校3年生の時です。
バイト先に霊感が強いという女の人が居ました。
竹田さんです。
竹田さんはヤンキーでしたが、今は消息不明です。
武勇伝とエロ話とお化けの話、 その3通りしか話のレパートリーが無い人でした。
面白い人でしたが今は音信不通です。
ある日僕は竹田さんに聞いてみました。

守護霊とか見えますか?

竹田さんは自信たっぷりに見えると言いました。
見える見える。
何故か二回言いました。
二回言うところが怪しいのでテストさせました。
他の人を使って実験してみたのです。

結果は・・・驚くべきものでした。
竹田さんはまず両手を相手の肩に乗せ、目を閉じます。
唸る竹田さん、何故唸るんだ、 僕は眉をひそめました。
竹田さんが静かに語りだします。
あなたの守護霊はおじいちゃん。
え?と実験台が振りむきます。
あなたのおじいちゃんメガネかけてるでしょ?
顔はねえ、こんな感じ・・・
竹田さんが似顔絵を描きます。
実験台の女は驚きの声をあげます。
これ・・・私のおじいちゃん!

本物だ、間違いない。
この人は本当に守護霊が見えるんだ!
次、俺お願いします!
僕は既に竹田さんに背を向け、 見て貰う準備を整えていました。
竹田さんの根性焼きだらけの手が僕の肩に伸びます。
続けて、竹田さんの唸り声。
唸れ!唸るんだ竹田さん!
お前にはこれしかないんだろう?
やってみせろ竹田さん!

手が肩から離れます。
振り向くと竹田さんは微笑んでいました。
竹田さん、僕の守護霊は?
竹田さんがゆっくりと口を開きます。

「いない」

・・・いない・・・いない!?
いないの?守護霊?
何?俺、野ざらし?
無法地帯?スラム街?霧のロンドン?
どういうことですか?

「今、どこかに遊びに行ってるみたい」

職場放棄?
なにそれ、俺の守護霊職務を全うしてないの?

「だっていないんだモン」

じゃあしょうがないね。
いないんだもん。
遊びに行ってるならそのうち帰ってくるさ。

・・・なんとも言えない気持ちになった。
俺の守護霊は守護って無かった。
俺の百太郎はうしろに居なかったのだ。

改めて見てもらおうと思っても竹田さんは音信不通だ。
見て貰う術が無い。
だから俺は思う。
こう思う。
俺の守護霊、きっとやるときゃやるよってね。